セルロースファイバーの調湿性能を徹底解説

セルロースファイバーは、調湿力にも優れた断熱材です。
特に「ジメジメする季節でも室内の湿気がこもりづらい」といった、肌感覚で実感できる快適さを生み出す背景には、この自然素材ならではの調湿性が関係しています。
このページでは、セルロースファイバーの調湿性能について、構造やメカニズムから解説していきます。

目次

調湿とは、空気中の湿度が高いときに湿気を吸い、乾燥時にはそれを放出する性質のこと。
セルロースファイバーは木質繊維系のため、微細な空隙と親水性をもち、空気中の水蒸気を蓄えたり吐き出したりする能力があります。

どうやって調湿しているのか

セルロースファイバーは、どうやって湿気を調整してるの?

湿気を吸収したり、放湿したりする機能には、セルロースファイバーの繊維構造が大きく関わっているんだ。

セルロースファイバーは、新聞古紙を原料とした木質繊維でできています。
この木質繊維には天然由来の「ミクロの空気層」と「親水性」があり、以下の2つの作用で湿度調整が行われます:

  • 繊維表面が湿気をキャッチしやすい
  • 繊維内部の空隙に水蒸気を一時的に保持できる

このため、外気や生活によって発生する湿度の急変を吸収し、ゆっくりと放出することで、室内の快適な湿度環境を保ちやすくなります。

たとえば、入浴後の脱衣室やキッチンなど、湿度の上下が激しい場所でも空気が重くなりにくいのは、この繊維構造のなせる技です。

結露対策にも有効

調湿性があると、結露しづらいってこと?

そうだね。ただし、条件もあります。

セルロースファイバーが壁体内結露(内部結露)対策に強いと言われる理由は、単なる断熱性能ではなく、次の2点によります:

  • 水蒸気を吸着して、飽和点到達を遅らせる
    → 結露=「空気中の水分が飽和して水滴化」。セルロースが吸ってくれればそのリスクが減る。
  • 湿度勾配の緩衝材になる
    → 外気と室内の湿度差をやわらげ、構造内部の急激な湿度変化を防ぐ。

ただし、吸って終わりではダメ
吸った水分は、どこかへ放湿して逃がさなければいつか結露のタネになります。

飽和含水率

どれくらいまでなら吸湿できるの?

体積のおよそ10%までの含水率であれば、断熱性能はあまり変わらないと言われています。

以下のグラフは、建材がどの程度の湿度まで水分を吸い込めるかを示した「吸着等温線(sorption isotherm)」です。

このカーブから読み取れるのは、湿度が90%を超えたあたりから含水量が急激に上昇し、約10%前後で飽和状態に達するという事実です。

つまり、セルロースファイバーは含水率が10%を超えると、それ以上水分を保持できなくなる=調湿材としての機能が失われていくということを意味します。

飽和状態になると何が起こるか?

  • 湿気を吸いきれず、壁内に滞留する
  • 蓄えた水分が抜けず、乾きにくくなる
  • 断熱性能が低下する
  • カビや腐朽菌のリスクが高まる

「吸ってくれるから安心」ではなく、吸ったあとにしっかり乾かせる構成にすることこそが重要なのです。

調湿をしっかり生かすためのポイント

吸放湿性能を持つ断熱材を活かすには、「吸った後に乾ける」構造かどうかが重要です。

基本の3要素

ポイント解説
① 通気層・透湿性の確保外壁側に透湿できる状態を設けて「湿気の抜け道」をつくる。
② 室内からの湿気侵入をコントロール気密層+防湿層を正しく施工し、湿気を壁内に入れすぎない。
③ 吸収できる以上の水蒸気を入れない居室の湿度管理や換気が重要。室内の相対湿度は50%を目安に。加湿器過多にも要注意。

例えば:
内装にビニールクロス、外壁に透湿抵抗の高い構造用合板+サイディングなどは避けた方がいいね。

セルロースファイバーは、高性能な断熱材であると同時に、「自然素材の家」に最適な素材です。
ただし、吸って終わりではなく、乾いて戻ることまで含めて設計してこそ、その真価を発揮します。

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