断熱材選びの本質:セルロースファイバーの断熱性能を徹底解説

セルロースファイバーは、自然素材を使った断熱材の中でも、熱を伝えにくいだけでなく「体感温度の変化がゆるやか」「結露しにくい」など、住まいの快適性に優れた特徴を持っています。

このページでは、セルロースファイバーの断熱効果について、数値だけでは見えてこない本当に効く理由を、構造や素材の特性とあわせてわかりやすく解説していきます。

目次

断熱材を選ぶとき、多くの方がまず確認するのが熱伝導率です。
しかし、同じような熱伝導率でも、「なぜか暑くなりにくい」「冷えにくい」と感じる断熱材もあります。この数値は、断熱性能の基本的な指標とされています。

熱伝導率(=断熱性能)

断熱性能って、どうやって比べればいいんですか?

まず見るのは、熱伝導率だね。材料そのものがどれだけ熱を通しにくいかを示す数値だよ。

「熱伝導率(λ値)」は、数値が小さいほど熱を伝えにくく、断熱性能が高いとされています。
この数値は、断熱材のカタログや仕様書でよく比較される基本的な性能です。

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セルロースファイバーグラスウール発泡ウレタンEPS(ビーズ法)
熱伝導率(W/mK)0.0380.0380.038~0.0190.036
特徴熱容量と調湿性が高く、体感に優れる。安価で施工がしやすいが、すき間ができやすい。断熱性と気密性が高い。燃焼時に注意。基礎断熱などにも使われるボード系素材。

「セルロースファイバー」の断熱効果は、グラスウールと同じくらいってこと?

数字だけ見ると同程度に見えるけど、実際住んでみたら、数字以上の効果を感じられると思うよ。
理由は、セルロースファイバーの断熱性能に、熱伝導率以外の要素も大きく関わっているからなんだ。

熱容量(比熱・蓄熱性)

熱容量ってあまり聞いたことがないんですけど、断熱と関係あるんですか?

夏の直射日光なんかは、熱容量の効果がしっかり体感できるはずだよ。

「熱容量」とは、断熱材がどれだけ熱をためこみ、ゆっくり放出するかを表す性質です。
数値が大きいほど、外気温の変化が室内に伝わるまでに時間がかかり、室温の変化が緩やかになります。
特に夏の直射日光や冬の放射冷却が影響するタイミングで、この効果ははっきりと現れます。

熱を蓄え、放出する過程で室内の冷気により徐々に冷やされることで、室内の温度変化が緩やかになる。

セルロースファイバーの熱容量

セルロースファイバーは、比熱容量が約2.1kJ/kg・Kと非常に高く、断熱材の中でもトップクラスの蓄熱性能を持ちます。
木質繊維でできており、内部に空気層を持ちながらも高密度で施工されるため、「断熱」と「蓄熱」を同時にこなせるのが大きな特長です。

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セルロースファイバーグラスウール発泡ウレタンEPS(ビーズ法)
熱容量(蓄熱性)2.10.841.42.1
特徴高蓄熱。室温変化を和らげる蓄熱性は低く、軽量素材断熱性は高いが蓄熱性は中程度蓄熱性は低く、軽量素材

断熱性能の数値だけじゃわからない、真夏でも屋根裏の温度がムワッとしないってのが、セルロースファイバーの効き方の特徴だね。

隙間なく施工できる構造

「断熱材って、ちゃんと詰めてあればどれも同じじゃないんですか?」

いや、すき間の有無で効き方はガラッと変わるよ。どんなにいい断熱材でも、施工が甘けりゃ意味がない。

断熱材は、素材自体の性能が高くても、施工にすき間があれば本来の力を発揮できません空気の通り道ができると、そこから熱が逃げ、冷暖房効率が大きく損なわれてしまうのです。

建材試験センター等の検証では、断熱層の一部にすき間(充填不良)があると、面積比わずか5%の断熱欠損でも全体の断熱性能が15〜20%低下することが示されています。

セルロースファイバーは、機械で吹き込みながら壁の中に圧力をかけて充填するため、柱やコンセント周り、配線の裏までムラなく隙間なく埋めることができます。

グラスウール(左)とセルロースファイバー(右)の施工イメージ

施工精度の高さ(=実効性能)

吹き込み密度(55kg/㎥)が確保されていることで、断熱欠損が起こりにくく、カタログ通りの性能が出やすいのも特徴です。
パッシブハウスなど多くの高性能住宅で取り入れられており、長期間安定した性能が期待できます。

▲隙間なく、55kg/㎥で施工されたセルロースファイバー

経年劣化しにくい(長期安定性)

断熱材って、この効果がずっと効くんですか?

実は、素材によっては沈下したり、隙間ができたりして、性能が落ちることもあるんだ。特に、施工が甘いと危険だね。

断熱材は、施工直後の性能がそのままずっと続くとは限りません。
例えば、グラスウールは、重力や振動によって沈下し、内部にすき間ができてしまうことがあります。それによって断熱性能が10〜20%も低下するケースも報告されています。

セルロースファイバーの安定性

セルロースファイバーは55kg/m³以上の高密度で隙間なく吹き込むことで、時間が経っても沈下しにくいという特長があります。


実際に、私たちが採用しているセルロースファイバーは、(財)建材試験センターによる沈降試験において、以下のような検証が行われました。

試験概要

  • 吹込み密度:55kg/m³以上(実施工に近い条件)
  • 起震器により25Hzの振動を24時間連続で加える→これは、おおよそ30年分の地震・振動環境を再現する条件
  • その後、セルロースファイバーの内部の密度変化を測定

沈降は見られなかったため、実質的に「30年分の振動」にも耐え、断熱性能を維持できるという結果が出ています。

30年分の揺れにも耐えられることこそ、セルロースファイバーの真の強みとも言えるだろうね。

ここまで、セルロースファイバーの断熱効果を「熱の伝わりにくさ」だけでなく、「熱のためこみ方」「施工性」「耐久性」といった4つの観点から見てきました。

そのどれもが高い水準で備わっているからこそ、セルロースファイバーは、数値だけでは測れない“体感の快適さ”を生む断熱材なのです。

こんな方におすすめ

  • 性能が落ちにくい断熱材を探している方
  • 夏の暑さも冬の寒さも、しっかり防ぎたい方
  • すき間やムラのない、しっかりした施工を重視したい方
  • 自然素材で、家にも人にもやさしいものを選びたい方
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